n8n(エヌエイトエヌ)は、難しいコードを書かなくても
「これが起きたら、次はあれをする」
といった分岐のある操作を自動化できる便利なツールです。
たとえば、毎週月曜の朝にGoogleスプレッドシートにあるキーワードでニュースを自動収集し、Slackに送信するといった一連の流れを簡単に自動化できます。

最近では多くの非エンジニアからも注目されていますが、いざn8nを始めようとすると
「クラウド版とセルフホスト版、どっちを選べばいいの?」
と迷ってしまう方も多いはず。
じっさいそれぞれに特徴があり、自分に合っていない方を選んでしまうと「これは面倒だ…」と感じてしまうことも。

この記事では、n8n初心者の方でも理解しやすいように、クラウド版とセルフホスト版の違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
また、どんな人にどちらの使い方が向いているのかも紹介するので、これからn8nを始めてみたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

【結論】非エンジニアのn8n初心者にはクラウド版がおすすめ

はじめに結論からお伝えします。
当サイトでは7項目にわたり、n8nのクラウド版とセルフホスト版を比較しました。
比較結果は以下↓
※料金は1ヶ月プラン加入時のもの

n8nのクラウド版とセルフホスト版の違いがわかる表

比較した結果、非エンジニアでn8nの初心者には「n8nのクラウド版」がおすすめ、という結論になりました。
つまり、n8n公式サイトから会員登録して利用するのがおすすめです。

このような結論になった理由を解説します。

人件費を考えるとクラウド版の方が安くなる

n8n初心者の非エンジニアにクラウド版をおすすめする最大の理由は手間代、つまり人件費です。

先ほど紹介した表にも記載しましたが、クラウド版は1ヶ月プランの料金は約4,000円。
長期プランに加入して割引が発生しても、3,300円ほどかかります。
これに対してセルフホスト版は、1ヶ月プランでも1,000〜3,000円ほど。
価格が安いサーバーで12ヶ月・24ヶ月などの長期プランを利用すれば、1ヶ月あたり700円くらいの費用で利用することも可能です。
これを見るとセルフホスト版の方が圧倒的に料金が安く見えます。

けれど、セルフホスト版だと

  • 独自ドメイン取得
  • サーバー設定・管理
  • 運用・保守管理
  • 他のSaasとの連携設定

などの作業をすべて自分でしなければなりません。
しかも、n8n運営会社による公式サポートを受けられません。

個人差はありますが、おそらく非エンジニアだと初期設定だけで1〜2時間以上かかります。
※OAuth設定も含めた時間
さらに、定期的なメンテナンスやアップデート作業も発生します。

これらの作業にかかる時間を時給に換算すると、クラウド版の方がコスパ的に良くなります。
なので、非エンジニア、なおかつn8nの初心者には「n8nのクラウド版」がおすすめなのです。
クラウド版だと2週間の無料体験ができ、金銭的リスクがない状態でn8nを体験できるのもポイントです。

・n8nクラウド版公式サイト
https://n8n.io/

n8n公式サイト

セルフホスト版への挑戦はn8nに慣れてから

n8nセルフホスト版には

  • 固定費が安い
  • ワークフロー関連の上限がない

という、素晴らしい魅力があります。
だからセルフホスト版に惹かれるのはわかります。
けれど、まずはクラウド版で2週間無料体験してください。
当サイトにはn8n初心者でも実際に手を動かしながらワークフロー作りを学べる記事がありますので、ぜひリンク先記事を利用してください。

そして

「色々なタスクを自動化できそうだな」

と感じたら最も安いStarterプランに課金してください。
そして、n8nを使ったタスク自動化にどんどん取り組んでください。

取り組んでいるうちに

  • クラウド版の上限よりも多い数のワークフローを動かしたい
  • Dockerなどインフラ関連の知識を身に付けたい
  • もっと自由にn8nをカスタマイズしたい

などの意欲が出てきたら、セルフホスト版にトライする、という流れがおすすめです。
非エンジニアがセルフホストに挑戦する時は、以下の私のセルフホスト体験記が参考になると思います↓

ただ、この結論は非エンジニアで、なおかつ周囲にエンジニアがいないことを前提としています。
もし会社にインフラエンジニアなどが在籍しており、会社での導入を考えているなら最初からセルフホスト版がおすすめです。

すでに結論はお伝えしましたが、ここからはn8nにはクラウド版・セルフホスト版の違い等について、初心者向けにじっくり解説していきます。

n8nのクラウド版とセルフホスト版について簡単に解説

お伝えしたように、n8nのクラウド版とセルフホスト版があります。
それぞれについての基本的な概要をまず解説します。
ここで、クラウド版とセルフホスト版の違いとざっくり把握しておいてください。

クラウド版はサイトにアクセスして使う

クラウド版はn8nの公式サイトに登録して、すぐにブラウザ上で使えるタイプです。
アカウントを作ればすぐに使い始めることができます。

パソコンに何かをインストールしたり、難しい設定をする必要はなく、手軽にスタートできるのが最大のメリットです。
2週間無料で使えるのも初心者にとって嬉しいポイント。
「まずはn8nがどんなものか触ってみたい」
という方にはぴったりです。

セルフホスト版では自分で環境を用意する

セルフホスト版は、n8nのシステムを自分でサーバー(またはパソコン)にインストールして使うタイプです。
言い換えれば
「自分でn8nの環境を用意して運営する」
ようなイメージです。

具体的には

  • 独自ドメイン(セキュリティ等を考えると必須!)
  • サーバー

などを用意し、そこにn8nをインストール。
そしてn8nが動くように設定します。

n8nのクラウド版・セルフホスト版の違いを7項目で比較

ここからは、n8nのクラウド版・セルフホスト版の違いを7項目に分けて紹介していきます。
気になる部分だけでもOKですので、ぜひチェックしてください。

利用料金の比較

はじめに、n8nの利用を検討してるみなさんが最も気になるであろう料金面を比較します。
結論から言うと、毎月の固定費用はセルフホスト版の方が安く済みます。

クラウド版にはStarter(個人向け)、Pro(チーム向け)、Business(企業向け)などのプランがあります。
この記事では、最も一般的なStarterプランを前提にセルフホスト版と比較します。
n8nのStarterプランだと1ヶ月の料金は24ユーロ。
為替にもよりますが、約4,000円です。
登録してから2週間は無料で使えますが、料金は意外と高いです。

これに対して、セルフホスト版ではn8n自体は無料で使えます。
代わりに、ドメイン代やサーバー代などのコストが発生します。
n8nのセルフホスト先として人気のあるレンタルサーバーの料金は月間8ドル〜十数ドルくらいのことが多いです。
※※料金は1ヶ月プラン加入時のもの
もし20ドルだとしても、月間2,900円くらいですから、費用面ではセルフホスト版の方が安くおさまります。

n8nを1ヶ月利用した際に発生する料金の目安を下の表で整理しました。

n8nを1ヶ月利用した際に発生する料金の目安

お伝えしたように、セルフホスト版の方が料金は安くなります。
けれど、後ほど紹介しますがセルフホスト版は「人の手間」がクラウド版よりもはるかに多く発生します。
よって、n8nの運用で発生する人件費も含め、トータルで費用を比較することをおすすめします。

「初期設定にかかる時間」を比較

つぎはn8nの導入・利用を決定してから利用開始の時間を比較します。
つまり初期設定にかかる時間ですね。
当然といえば当然ですが、クラウド版の方が遥かに早く利用を開始できます。

n8nのクラウド版はSaasの一種です。
よって、n8n公式サイトから会員登録したら即利用可能です。
登録も簡単なので、サイトにアクセスしてから数十秒〜数分で利用できるようになります。

セルフホスト版の場合、普通にインストールしようとするとn8nの利用開始まで様々な工数が発生します。

具体的には

  • サーバー契約
  • ドメインの取得・設定
  • OSセットアップ
  • Dockerインストール
  • n8nのデプロイ

などがあり、非エンジニアにとっては過酷な作業です。
慣れてる人でも数時間かかった、なんて体験談もあります(参考:Jono CatliffさんのYouTube
だからなのか、n8nユーザーはワンクリックでn8nのセットアップができるレンタルサーバーを利用してる人がほとんどです。
n8nユーザーから支持されてるのはRailwayHostingerDigitalOceanなどです。
これらを使うと数分でセットアップが完了することもあります。
私はHostingerを使いましたが、5分ほどでセットアップが完了しました。
体験記は↓
n8nをHostingerでセルフホストしてみた|契約から公開までの手順を解説

ただ、これらのサービスを利用してもクラウド版より時間がかかることは変わりません。
n8nをすぐ使いたい人はクラウド版を使うべきです。

・n8n公式サイト
https://n8n.io/

利用できるワークフロー数・実行回数を比較

n8nはワークフロー、つまり作業の一連の流れを自動化できるツールです。
クラウド版だとワークフロー数やワークフローの実行回数に上限があります。

「ワークフロー数やワークフローの実行回数って何?」

という方向けに簡単に解説します。

  • ワークフロー数:「n8nで自動化した一連の流れ」の個数のこと
  • ワークフロー実行回数:ワークフローを動かして処理が発生した回数のこと

下のキャプチャは私がn8nで作ったワークフローです。
これで1個のワークフローとなります。

筆者がn8nで作ったワークフロー

このワークフローだと開始から終了まで6回の処理が発生します。
よって、ワークフローを1回動かすと、ワークフローの実行回数は「6回」となります。

クラウド版の3つのプランとクラウド版の

  • アクティブワークフロー数上限
  • ワークフロー処理数上限

をまとめると以下となります。
※「アクティブワークフロー」とはON、つまり稼働してるワークフローのこと

n8nで利用できるワークフロー数・実行回数を比較

セルフホスト版の上限なし、というのは魅力的です。
とくに大規模なワークフローを組んだり、処理回数が多い場合は必然的にクラウド版を選択することになります。

n8n運営会社によるサポートで比較

n8nを使っているとトラブルが発生することもあります。
トラブル発生時に頼りになるのがn8n運営会社によるサポート。
残念ですがクラウドホスト版では運営会社によるサポートは受けられません。
運営会社からサポートしてもらえるのは、クラウド版に有料課金してるユーザーのみです。

セルフホスト版を利用してる場合、トラブル時は以下を参考にして自力で解決しなくてはなりません。

セルフホスト版だと大小さまざまなトラブルが発生します。
自力でトラブルを解決するのが苦手、という人にはクラウド版の方が向きます。

アップデート対応・保守管理・セキュリティ対策で比較

WEBサービスを運営してると、いろんな業務が発生します。
n8nのセルフホスト版だと、それらすべて自分で対応しなくてはなりません。
発生する業務例をいくつか挙げます。

  • n8nのソフトウェアアップデート
  • セキュリティ対策
  • データのバックアップ

非エンジニアがこれらすべて対応するのは大変です。
ターミナル(インフラエンジニアの人がよく開いてる黒い画面です)でコマンドを入力したりしますからね。

クラウド版なら、これらすべてをn8nが対応してくれます。
クラウド版の方がn8nを使ったタスクの自動化に集中できる、とも言えます。
セルフホスト版だとどうしても様々な業務が発生するので、それに時間をとられてしまうのです。

連携で必要な「OAuth設定」で比較

n8nの醍醐味はサービスとサービスをつなげ、点だったタスクを線、つまり「ワークフロー」にできる点です。
ワークフローにするためには、それぞれのサービスとn8nを連携させなくてはなりません。

連携するときに使われるのが「OAuth設定」。
※OAuthは「オーオース」と読みます
セルフホスト版だと連携するサービスすべて個別でOAuth設定しなくてはなりません。
つど手間が発生します。
たとえば、GoogleやTwitterと連携する場合、APIキーの取得、認証画面の設定、リダイレクトURLの登録など、初心者には慣れない作業が求められます。

クラウド版ではn8nがすべて対応してくれます。
様々なサービスを組み合わせてワークフローを自動化したい場合、すぐ自動化できるのはクラウド版の方です。

データを管理するサーバーで比較

n8nクラウド版を利用すると、連携するサービスの認証情報(APIキーなど)等はn8n社の管理するサーバーに保存されます。
当たり前のことですが、とても大事なことなので比較項目に入れました。

企業によっては自分たちのサービスに関する情報をn8nの他社サーバーに置けないこともあると思います。
とくに顧客データや業務フローに関わる情報を扱う場合
「クラウド上に保存されること自体がNG」
という企業もあります。
こうした場合、セルフホストで自社の管理下に置くことが必須となります。

個人の場合はそれほど気にならないと思いますが、このような違いがあることは理解しておいてください。

n8nのセルフホスト版が向く人の特徴を紹介

最後に、n8nのセルフホスト版が向く人の特徴を紹介します。
以下に該当する場合、はじめからクラウド版よりもセルフホスト版を使った方が良いです。

  • 時間を使っても良いからとにかく毎月の出費を減らしたい人
  • サーバー管理やDockerなどの技術にある程度の知識がある、または積極的に学習する意欲がある人
  • 近い将来、仕事で大規模なタスク自動化を計画している人
  • 扱うデータの機密性が高く、全てのデータを自社(自身)の管理する環境でコントロールしたい企業や個人
  • n8nに独自のカスタマイズや社内システムとの密な連携を行いたい人

そして、海外ユーザーなどは以下のレンタルサーバーを利用してセルフホストをしています。
英語のYouTubeで調べればn8nとの連携方法がたくさんありますので、動画を参考にしながら設定してください。

Hostingerに関しては、私がじっさいにHostingerを契約し、n8nをセルフホストした体験談を記事にしています。
最も安いプランだと月間700円くらいでn8nをできますので、節約したい方はぜひチェックしてください↓